本書は、平成14年4月より横浜市市長に就任した中田宏氏とそのブレーン(エンジンル-ム)の下で市政改革に取り組んできた横浜市役所と市民の活動を体系的に検証・評価したもの。現場に対するトップからの強い具体的なメッセージとその緻密な実行手法の提唱と実践は大変読み応えがある。圧巻は第二部第5章の「全国自治体改革の流れと横浜市の位置付け」で、本書を一市政改革の記録とするだけでなく、組織改革の現場で日々闘う人々にとっての羅針盤ともいえる、より普遍的な示唆に富む内容となっている。(経営破綻後3年半前に外資により再スタートを切った金融機関へ最近転職した筆者としては、大いに触発されかつ勇気づけられる書物でした。)
知り合いから聞いた実話であるが、霞ヶ関の若手上級職を集めた研修の場で「自分の仕事を後輩に自信持って勧められますか?」と問いかけたところ、ほとんど手が上がらなかったという。ことほど左様に、「お役所」業界の自信喪失と閉塞感は深い。今日の社会に求められる能力(スキル)を今の政府は提供できていない。政府の無能化と、それに伴う公務員の自信喪失はコインの両面である。しかし希望はある。職員3万人を超す巨大組織・横浜市役所で「行政の無能化」を克服する改革が着々と進んでいる。この本は、巨大組織改革の「仕掛け」とノウハウを解説しようという試みである。筆者の一人は元市役所職員で市長直属のブレーンであり、豊富な内部情報に基づく分析は示唆に富む。現在の「役所」に絶望している公務員は、ぜひ本書を読んでほしい。特に霞ヶ関の人たちにとっては必読書である。役所だって変われるのである。仕掛けと工夫ときっかけ、そして努力があれば。
中田市長のキャラクター先行で、テレビや新聞では断片的にしか伝えられていない横浜市の改革について、その狙い・プロセス・一部の成果がよくわかる本。三重県や福岡市での実践事例を踏まえ、横浜ならではの改革を推進している最中の中間報告であり、これが自治体改革の最先端と言ってよいだろう。大組織に落下傘で降下したトップのあり方、それを支えるブレーン達の使命、組織の動かし方、ステークホルダーの巻き込み方など、自治体に限らず、およそ「改革」というものに興味がある人にとってはかなり参考になる内容であると思う。実は、その内容よりも、客観的で抑えたトーンでありながら、当事者ならではの熱い思いが伝わってくる文章にとても感動した。中田市長の考え方がよくわかる点でも◎。ただ、読後、横浜市に住んでいる方々がとても羨ましく、このような恵まれた環境ではない自分の住む自治体で、一市民として一体何ができるのか、少し絶望的な気分にもなってしまった。