三井物産筆頭常務安川雄之助氏は、物産を今日のような世界的シェアに拡大させ、企業を大発展させた立役者である。三井高利を祖とする旧財閥三井の傘下にあるとは言え、日本敗戦後の創業当時の経営は多難であったに違いない。安川氏の先見性、経営の多角化とグローバル化、リストラクチュアリングが実を結び、高度経済成長とオイルショック・バブル崩壊を乗り越えて、2003年3月、連結決算で売上高13兆円の大企業に大成長した。今後の三井物産は、新規事業の構築と企業再構築、経費の削減と、経常利益を上げることが課題となる。
今日の三井物産の方向性と礎を築いた安川氏の生涯である。2等国であった当時の日本にあって、剃刀のような鋭敏部な頭脳と先見性を持ち、情報を駆使し世界に冠たる物産を築き上げた稀有の人材であった安川氏が晩節の不遇に処せられた事が日本社会の限界を示す物ではなかったか。今日の日本経済の低迷を考える時、安川氏が考えていた日本と企業像と現実との乖離を深く考えさせられる一冊である。